なんのための模擬裁判か 学長 中村 勝範

第一回模擬裁判の様子
平成国際大学が北関東における総合大学を目指して呱々の声をあげたのが平成8年4月であった。  平成12年4月から法ビジネス学科が増設され、大学院法学研究科が新設された。大学祭は建学初年度から行われてきているが、その中において「模擬裁判」が初めて催されたのが平成11年であった。それから今年で、連続して回を重ねること4回目である。  第一回模擬裁判は思い出しても心がふるえるほど新鮮であり、強烈であり、衝撃的であった。シナリオも配役も、会場周辺の整理整頓、誘導もすべて学生たちであった。法律、政治行政学科の枠を超えて、この問題に関心のあるものが渾然一体となって完遂させた3時間余りの大模擬裁判であった。これを見ごとに打ち上げ、各方面に多大にインパクト与えたことによって、学生も教員も、われわれもやればできるのだという自信を持ち得た貴重な体験であった。大学の存在意義は、そこにある学生、教職員が自信を持つことによって高められるが、その意味で、第一回模擬裁判の歴史的な意味は大であった。  なにごとも回を重ねると、初回の時にも得るように抱いた歴史的使命感を失っていくものである。今年も大学祭があるから、模擬裁判をやらねばならぬという意識では生命力を失い魅力も喪失する。  物事というものは、つづければつづけるほど、マンネリになり活力が消えがちであるから気を付けなくてはならぬ。また見る方も前回、前々回を上回るところがないと満足しない。このことは大学祭そのものについてもいえることであるし、大学自体こそすべてのことに惰性に流れることのないように十分に注意をしなくてはならぬ。  いま佐藤栄学園は本学とは全く別個に法科大学院を設立しようとしている。私はそのことに双手を挙げて賛成している。その準備は着実に進み、建設地も決まり、校舎の全容もきまり、その他のこともすべて着実に前進している。かくして学校法人佐藤栄学園は限りなく発展していくが、さてそこで問題になるのは、法学部単一学部の平成国際大学の位置づけである。  学科も増設した、大学院修士コースまではできた。しかも法曹界への人材を供給する法科大学院が、本学とは別個にできるのである。しからば、わが平成国際大学は建学時点からわれわれの頭の中にあった法学部のまゝであってよいのであろうか。  我々はいま、本学の進むべき道の岐路に立っているのではないか。  本学は昨年7月以来、教員たちによる「将来構想委員会」を設け、今後あるべき平成国際大学の進路を模索してきた。法科大学院の設立が、確実となった現時点において、本学の将来を検討しなおさなくてはならない。秋が来たから大学祭を行うのではなく、何のために行うのか、大学祭があるから模擬裁判を催すのではなく、何のためにそれを行うかを教員、学生が一体となって考える大学祭であり、模擬裁判でなくてはならないという重大な課題がいまわれわれの前に押し付けられている。
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