模擬裁判は大学祭の核である 学長 中村 勝範

第一回模擬裁判の様子
 本学は平成八年四月開学した。その年、一年しか在籍者がいない大学において大学祭が行われた。元気のいい大学と自他ともに任じた。  四年目の平成十一年の大学祭で模擬裁判が行われた。本学は法学部単科大学であるにしても、開学四年目において模擬裁判が行われることは快挙であった。  法学部の歴史、五十年、あるいは百年を有する大学においても模擬裁判を行うことは至難であるが。本学の学生諸君は開学四年目にして至難のハードルをクリアーした。  さらに、本学初の模擬裁判のレベルは極めて高度であった。この時模擬裁判を毎年行ってきている大学の法学部教授数人が見学に来たが、三時間にわたる長丁場が堂々と演じぬかれたのを観て胆を冷やした。その結果、翌年からは、その大学の模擬裁判が姿を消したということを聞いた。  本学の模擬裁判は、他大学の有名な模擬裁判を食って成長した。昨年の模擬裁判は前年の模擬裁判を糧にさらに質的に向上した。  そして今年、三回目の模擬裁判である。三度目の正直という諺があり、失敗につぐ失敗の末に三度目に成功するという事である。しかし、本学の模擬裁判は最初から大成功であり、二度目もまた成功した。成功者の三度目はえてして「弛緩」になる例が多い。今回最も注意すべきはこの弛緩である。過去の二度の成功を忘れ、初心に戻り、シナリオは推敲には推敲を重ね、演技には磨きに磨きをかけて大学祭に臨むことが大事であるとおもう。  なお、本学の模擬裁判の特徴として高く評価されているいま一点につき、特に記しておきたい。この催しものは一つのゼミ、あるいは一つのグループだけによって行われるものではなく、いくつかのゼミ、グループの協力によるものであるところに高い価値がある。  第一回以来、模擬裁判は、もちろん一つのゼミ学生が中心になってはいたが、これに協賛するほかのゼミ学生の協力があった。その協力はただに法律専攻の学生ゼミやグループだけではなく、政治学専攻の学生の間からも協力の手が差し伸べられた、今回はさらに法ビジネス学科の学生の協力もあるかもしれない。  模擬裁判を持って大学祭の核であるとするゆえんは、この多方面の学生による共同作業の成果という点にある。  花を真に愛でる人はその花に水を送り、エネルギーを供給する葉や幹やさらに根っこまでも想像する。同様に模擬裁判の成功を支える目立たない裏方の応援グループにも私は心打たれ続けてきている。成功を祈る。
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