死刑かはたまた無罪か 学長 中村 勝範

第一回模擬裁判の様子
 大学祭のシーズンである。本学の大学祭は開学以来、五回目である。歴史は浅いし、回数もまだ少ない。しかしながらわが大学祭はすでにして注目すべき輝かしい成果を挙げ伝統を構築してきている。  まず第一点は本学の創立初年度から大学祭を行うという元気のいい大学の気風を醸成したことである。一年生しかいない大学で3,000名を上回る参加者を集めた第一回大学祭であった  第二点目は元気のある大学の溌剌たる大学祭は毎年盛り上がり、去年の参加者は7000名を突破しただけではなく模擬裁判を上演し、新局面を切り開いた。  模擬裁判は長い歴史と伝統を有する大学においてもなかなかできるものではないが、本学は開学4年目にして堂々たる模擬裁判を上演し抜いた。その上にそのレベルが極めて高度で、劇的効果も絶大であった。三時間の上演の間、席を立つ者殆どなしというほど観客を魅了した。  加うるに、我が国の裁判ではいまだ実施されていない参審員制度による裁判ということで、他大学の法学部教員、学生からも多大な注目を集めたのであった。  今日、我が国の法曹界では参審制の導入が議論されるようになっているが、昨年の本学模擬裁判は大学法学部レベルのものではあるが、この制度を問題にした最初の試みであった。今年の模擬裁判も昨年同様参審制度とオーソドックスな死刑制度の問題を絡めつつ十三人を殺害した被告人にはたして刑法上の責任能力が認められるか否かが論点となるようである。  最近、精神障害者と考えられる目立った犯罪が多発している。この場合、精神医による精神分析の結果が裁判中の証言として重要視されている。本模擬裁判においてはその局面を導入し、観客のこの方面の蒙も啓きたいという意図が上演者側にあるようである。  今年の模擬裁判は先述の通り13人もの人間を殺害したという被告人を設定し、その犯行が正気の下でのものであるか、それとも精神障害によるものであるか、言葉を換えていうと死刑か、それとも無罪かとい、息をのむようなシーンが展開されそうである。  模擬裁判を観ることにより、この秋の知的収穫の一つにあることだろうと期待している。
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